持続可能な自立へ

持続可能な自立へ

2020年、COVID-19(新型コロナウイルス)が世界に猛威を振い、僕たちの生活は大きく変化しました。僕の住む日本でもCOVID-19の影響によって様々な事が起こり、自粛を迫られた約2ヶ月間、色々なことに意識が向く期間となりました。この期間で改めて考えさせられたこと、主に、「エネルギー」と「食料」について、「持続可能な自立」という視点からシェアできればと思います。世界的にCOVID-19が流行するとともに、経済活動が一時的に縮小し、石油需要が大幅に減少。それに拍車をかけるように、産油国(ロシア、サウジアラビア、など)が原油の増産に踏み切ったことで原油価格が暴落。日本国内でもガソリンの価格減少などが起きました。増産に踏み切った背景には、OPEC(石油輸出国機構)+ロシアが会議を開き、原油価格を維持するために減産をしようとしましたが、OPECに加盟していないアメリカが減産を行わず、化石燃料のシェアを拡大した場合、メリットがないと主張するロシアが増産を表明し、サウジアラビアも増産に踏み切り、原油価格が低下したと言われています。実際、COVID-19の影響による産油国の増産の前から、世界的な景気後退から石油の需要が少しづつ減少しており、また、環境問題の観点から、中国やヨーロッパの各国をはじめとし、再生可能エネルギーへのエネルギー転換を強め、化石燃料産業から投資撤退する動きもあり、化石燃料全体の需要が減少していく動きが起こっています。世界でも上位に化石燃料に融資をしていた、みずほファイナンシャル・グループ(FG)が、石炭火力発電所向けの新規投融資を段階的に減らし2050年までにゼロにするという方針を発表したのは記憶に新しいと思います。このような世界的な動きによって、現在、石油備蓄への資金投入はここ20年以上で最低で、世界の石油需要は2030年までにピークを迎える可能性がある、という予測もあり、再びオイルショックが起こるのではないかと懸念されています。1973年に起きた第1次オイルショックでは、各種物資の不足が懸念されトイレットぺーパーを中心に砂糖や石鹸などを買い占め騒動が全国に拡大したり、翌年の1974年に物価上昇率が23%を記録し、企業の設備投資などが落ち込み、景気後退に陥ったと言われています。また、第2次オイルショックでは、石油供給量の激減とOPECによる原油価格の上昇が重なり、原油価格が高騰し、1バレル12ドルだったものが34ドルになり、日本では、ガソリンが一時、177円/ℓを記録しています。そして、今回のオイルショックでは、2008年に記録した原油の史上最高値(1バレル 147ドル)を上回るのではないかと予測されています。経済産業省の統計によると、日本は世界第5位のエネルギー消費国でありながら、エネルギー自給率は9.5%(2017年)で、約90%を海外からの輸入に頼っており、エネルギー供給全体の87.7%を化石燃料が占めているため、上記のような国際情勢によって、日本のエネルギー事情は影響を受ける可能性が高いです。他の国では、エネルギー消費量世界第1位の中国、第2位のアメリカのエネルギー自給率はそれぞれ、83.9%(2015年) 、92.2%(2015年)。また、エネルギー消費量世界7位のドイツは化石燃料の生産は少ないながらも、自給率は、38.8%(2015年)です。食料に関しても同じような現象が起こっています。農林水産省の統計によると、日本の食糧自給率は37%で、約6割を海外からの輸入に頼っています。そんな中、COVID-19の影響により、人の移動制限で労働者の確保ができなかったり、生産工場の停止を余儀なくされたり、世界各国で食料の生産が減少し、国内の供給を優先すべく輸出規制を行う国が出てきており、食糧危機が起こるのではないか、と報道されています。また、外出自粛により、食料品への需要が高まり、野菜は前年の同月と比較して、11.2%増加したという報告もあります。ただ、日本の農林水産物の輸入先1位のアメリカ(小麦、大豆、等)や2位の中国(鶏肉、冷凍野菜、等)で輸出規制が行われるという具体的な情報はなく、輸出規制による日本への影響は限定的だと言われています。しかし、今後、自給率が低いまま、輸入が期待できない状況で食料品や野菜等の需要が伸びた場合、国内で供給不足が起こる可能性があります。さらに、国際連合食糧農業機関によると、世界全体で利用可能なエネルギーの約30%が食料システム(栽培、収穫、貯蔵、加工、作物の輸送、等)に使用されていて、上述したようなエネルギー産業の傾向により食料品の価格高騰の可能性も考えられます。気候変動による気温上昇の影響で、国・地域によって、穀物の増産もあれば減産があり、例えば、トウモロコシは、米国では、豪雨や台風の頻発で、収穫量の減少が見込まれ、一方、中国の場合、寒さが厳しかった北部では、気温上昇により、生産量が増え、収穫量の増加が見込ると予測されています。このように、様々な要因によるエネルギーや食料に関する問題が危惧されている。その中で、僕が一番の問題だと思うことは、「僕たちの意思ではどうしようもできない環境になっていること」だと思う。エネルギーや食料は、僕たちの生活に深く入り込み、生きていく上で欠かせないものでありながら、自然災害や国際情勢によって、僕たちの意思が介在できないところで価格や供給量が決められてしまい、それを一方的に受け入れるしかない状況にあることは大きな問題だと感じる。オイルショック時のトイレットペーパー、COVID-19時のマスクや消毒液類の買い占めも生活に大きく影響を与えたが、エネルギーや食料の供給不足は、生活にもっと直接的なダメージを与えるかもしれない。COVID-19によって、経済的なダメージを受けた人々が多い今、電力やガソリンの価格が高騰したりや食料の供給が減少した場合、「生きる」ための争いが生まれてしまうかもしれない。世界が危機的な状況に陥った中で、自分が置かれている状況を改めて考えさせられた。様々な状況に対応でき、他に依存せずに、存在し続けることができる状態、「持続可能な自立」が重要だと思う。自分が自立した状態でなければ、自分だけではなく、他者も助けることができない。僕自身1人の人間として、持続可能な自立を果たし、広げていけるような人になっていきたい。参照:日経エネルギーNext(https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00009/00003/?n_cid=nbptec_fbed_nen&fbclid=IwAR3K0VGUVQyMM4Yo5p5QTQHV3CfO50uU_BSt-mgq15Ks1r-wIPWTfEDJEx0)/経済産業省 資源エネルギー(https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2019pdf/whitepaper2019pdf_2_1.pdf)/日本農業新聞(https://www.agrinews.co.jp/p50452.html、https://www.agrinews.co.jp/p50871.html、https://www.agrinews.co.jp/p51143.html)/ジェレミー リフキン(2020)『グローバル・グリーン・ニューディール: 2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う』NHK出版